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2011年05月15日

インタビュー:陰ヨガ(Yin Yoga)と日本でのティーチングについてポール・グリリーが語ってくれました。

ポール・グリリーとスージー・グリリー。2011年3月、ヨガワークス企画のティーチャートレーニングにて。

Interview by Dylan Robertson
Japanese translation by Kanako Izawa
Japanese edited by Hiromi Yamamoto

ポール・グリリー:1980年からヨガの指導を始める。研究分野は解剖学。ヨガをポーリー・ジンクに、哲学を東京在住のヨギで科学者の本山博(もとやまひろし)博士に学ぶ。本山博士の研究・著書を基盤とした独自の哲学は、中国の道教の経絡・針の理論に、インドのヨガと密教の理論を融合させたもの。妻のスージーとオレゴン州、アシュランド在住。

僕はポール・グリリーのDVDと著書のすべてを所有するほどの、ポールの作品の大ファンである。解剖学と陰ヨガに関する彼の指導に、ヨガの実践者として、まだ指導者として、受けた影響は計り知れない。そんなポールとパートナーのスージーが、この春、来日を果たした。ヨガワークスの企画するチャクラと経絡についての30時間ティーチャーズトレーニングのためだ。来日こそ逃した私だが、ヨガワークスのKanako Izawaの紹介のおかげで、スカイプを通してポールにインタビューすることができた。

 

 

陰ヨガの指導者として有名なあなたにお伺いします。陰ヨガとはなんでしょうか。

陰ヨガは、陽タイプのヨガの対照としてのみ存在します。広い視野でみると、ヨガのスタイルはどれもが、努力・汗・運動量の大小によって説明することができます。努力する分、汗をかいた分、ダイナミックに動く分だけ、アシュタンガ・ヨガに代表されるような陽タイプのヨガに傾きます。陰タイプのヨガは、努力や汗、力強さとは無縁です。私の教える陰ヨガは、寝そべって行うポーズがほどんどで、5分以上ホールドしますが、同じようにリストラティブヨガも陰タイプのヨガではないでしょうか。

陰ヨガを指導するのは、どのような理由からでしょう。

陽タイプのヨガはよく知られており、優れたスタイルが数多くありますし、実にたくさんの優れた先生がいますが、陰は少数派です。私自身、もう若くはありませんし、ヨガプラクティスは主に陰です。ですので、陰ヨガを指導する理由のひとつめは、陰ヨガが私の生活の一部だからということ。ふたつめは、ヨガの世界に身を置くなら激しい競争のないニッチを狙った方がよいと思ったからです。

陰ヨガの指導に、認定書は必要ですか。

いいえ、認定書は必要ありません。繰り返しになりますが、陰というのは区別するために使われる言葉にすぎません。もちろん私たちは「陰ヨガティーチャー」であり、「陰ヨガ」というスタイルを提案したいと思っています。ですが、「どのようなヨガを教えていますか?」と生徒から幾度となく質問されるうちに、そのポジションに落ち着いたのです。世の中にはよく知られたヨガスタイルが多く存在するというのに、「ハタ・ヨガを教えています」とだけ答えるのは無責任だと感じますし、どのようなレッスンかを明らかにするためにも、名前をつけるのは理にかなっていると思います。

そのきっかけをくれたのは友人のサラ・パワーズでした。「寝そべってするヨガって、陰ヨガじゃないかしら。」そう言って名づけたのは彼女です。「いわれてみれば、そうだね。」と、私は答えました。そんな風にして私たちは、「陰ヨガ」という言葉を取り入れるようになりました。「ハタ・ヨガを教えています」とうやむやにする代わりに、「陰ヨガを教えています」と言うことにしたのです。時が経つにつれ、日本でもアメリカでもヨーロッパでも、陰ヨガという言葉もそのレッスン内容についても、よく知られるようになりました。今では、陰ヨガがどのようなものか知った上で、みなさんレッスンに参加されます。そういう意味で、名前は役に立つものです。

あなたはヨガ解剖学の指導者としても有名ですが、あなたが教えるのは「道教的解剖学」ですか。

「道教的解剖学」は教えていませんが、道教的「視点」から見た解剖学を教えています。骨は骨として、筋肉は筋肉としてという意味で人間の解剖学ですね。解剖学というのはあまりにもテーマが大きく、あらゆる分野が研究対象になり得ます。解剖学に生涯を捧げているような熱心な研究者は、知らないことが山ほど存在するのを知っています。私の場合は、ヨガのプラクティスに関連する解剖学を専門としています。もちろん知識が及ばない解剖学も、指導しない解剖学も山ほどありますが、私が教えているのは、筋肉、骨、腱、血など、日々のヨガプラクティスを理解しやすくなるような、また説明しやすくなるような解剖学です。

解剖学のワークショップで、いちばん伝えたいことはどんなことですか。

まず、骨格の個性を知ってもらいたいですね。伸張と圧迫の違いを識別するために必要な知識ですから。体の感覚は、大まかに分類して、ストレッチ・伸張されている感じと圧迫されている感じのどちらかです。もちろん、ストレッチ・伸張の感覚はさまざまで、圧迫された感覚もまたさまざまですが、まずこのふたつの違いを識別することが肝心です。ただ単に「それを肩に感じる」とか「それを背中に感じる」と言うだけでは、重要な識別がされていません。「肩に伸張を感じる」や「肩に圧迫を感じる」と言って、感覚をはっきり特定しなければならないのは、それによって対処の仕方がまるっきり変わってくるからです。だからこそ、伸張と圧迫の感覚を識別するために、まず骨格の個性について知ってもらいたいと考えています。

ヨガ用語ではなく道教の言葉を使うことに、理由はありますか。

馴染みのある事柄について、別の見解から説明を試みることは健全だと思います。クラーク・マックスウェルのような優れた科学者も、ひとつの事柄について複数の理論をもつことは、それが単なる机上の空論でない限り、健全だと言います。同時に、相反する理論を持つのも健全なことです。一方方向から物事を見るだけで、「なるほど、すべて理解できた。謎は消えた。」などと理解したつもりになるのを防ぎます。ある理論について一生懸命考えているときに、誰かが「陰ヨガ」・「氣」・「血」・「丹田」などの異次元の用語を携えてやってくるのはためになることです。否応なしに、持論を深く掘り下げることになりますし、ある事柄に補足説明を加えようとすること自体、私たちの知的生活を豊かにするものですから。

レッスンに参加する生徒に意識して欲しいこと、覚えておいて欲しいことはどんなことでしょうか。

ヨガは未完成だということですね。伝統を重んじるのは大切です。しかし、自尊心ある科学者は、ニュートンやアインシュタインが言及したからという理由だけで、非論理的な発言に挑まなかったり、見過ごしたりすることはありません。「それはちょっと、おかしいんじゃないかな。」そう言ったからといって、ニュートンやアインシュタインを尊敬していないということにはなりません。偉人が過去に行った考察を繰り返すことは、愚かなことではありません。それどころか、思考する人として、過去の科学実験を何度も繰り返し行うことは、必要不可欠なステップなのです。なぜなら、すべては予測不可能だからです。月の裏側でパチンコ玉と羽毛を落下させたら、引力の法則に例外が見つかった―そんな日がくるかもしれないのです。今でも、人工衛星が太陽系の軌道からずれていくという矛盾が起こっています。ニュートン力学が予測した通りに動いていないのです。ニュートンが偉大だからといって、無視されるべきでしょうか。検証することは、尊敬を欠くことになるのでしょうか。これをヨガ、針などの東洋的、エネルギー的、内省的な芸術に置き換えて考えると、歴史があるからといって必ずしも正しいというわけではないということです。伝統だからといって、これまでずっとそうであったということではありません。民俗学や迷信は、いたるものに忍び込むという性質を持っているのです。

脱線してしまいましたが、私のレッスンに参加する人に知ってもらいたいのは、ヨガが完成したものではなく、今も進化の途中だということ。そして、何ごとも自ら経験するまでは真実になりえないということです。どんなことも自らの経験を通して、ようやく自分の経験の中で真実となります。同時に、「これは本当だろうか」と、あらゆる角度から疑ってみることです。私自身、的確な答えを導きだせるようになるには、この先、何年も経験を重ねる必要があると思っています。ですので、どうぞ、私がレッスンで話すことすべてに、よい意味で批判的になってください。そしてその懐疑心を、ヤシの葉に書かれた古代の書にも持ってください。そうした科学的な態度はとても健全なことです。

これまでに何度、来日されたことがありますか?

スージーと私は過去に5回ほど、日本を訪れたことがあります。

日本の第一印象はどのようなものでしたか。

日本の第一印象は、私の師、本山博士そのものでした。1990年のことです。先生について学ぶために来日した私は、東京郊外の井の頭にある先生の研究所兼神社で10日ほど過ごしました。そして、東京から3時間ほど離れた根府川にあるリトリートセンターで10日、その後、研究所に戻ってまた10日過ごしました。ひとところに留まっていたので、観光客らしいところは訪れませんでしたし、十分な時間もお金も持ち合わせていませんでした。3週間仕事を休んで、日本で学ぶための旅費を工面するので精一杯でしたから。その分、毎日の瞑想やヨガの練習に集中して取り組みましたし、手引書の解読や科学装置についての研究に打ち込むことができました。

外に出て、瓦ぶきの日本家屋が立ち並ぶのを見るのが好きでした。いまでは都会から消えつつある風景ですが、その界隈では当時まだ、線路沿いから少し離れると、昔ながらの日本家屋がどこまでも続いていたのです。とても美しいと感じましたし、そうしたものがまだ残っていることに、ほっと安心させられたものです。

日本で指導することは、どのような感じがしますか。

最高の皮肉とでもいうのでしょうか。というのも、私たちの指導の半分が、本山博士から学んだ理論です。私たちが発展させた解剖学についても触れましたが、今回は大半が本山博士による理論とチャクラのテクニックについて説明するものでした。本山博士の研究所からそう離れていない場所で、通訳を介して、日本人の生徒に指導するのです。このことについては、まだリアリティを持てずにいるというのが率直なところです。

今後、来日される予定があれば教えてください。

大阪に行く予定があります。これまでになくゆっくりと滞在できそうです。巡礼者として小豆島で厳かな神社の式典に参列した後、高野山のお寺に何日か滞在します。それから、大阪で解剖学についての1週間のトレーニングを指導します。責任や学習を離れた霊的巡礼者としての時間と、ヨガの指導のための2つの時間の均衡がとれた滞在は初めてですので、いまから楽しみにしています。

ワークショップに参加する日本の生徒に、学んでほしいことはどんなことでしょうか。

ワークショップでは、解剖学のことはじめとして、骨格の個性と伸張・圧迫の概念について学びます。それから、可動域の制限と、私たちが実践している対処法を紹介していきます。私からの一貫したメッセージは、古典だとかモダンだとか、東洋だとか西洋だとか関係なく、健全な懐疑心もって意欲的に実験し、ほかの誰かの答えに飛びつくのではなく、それぞれ自分の答えが見つかるまで、経験を積み重ねていって欲しいということです。

日本滞在中のお気に入りのアクティビティや場所があれば、教えてください。

寺や神社を見て回るのが好きなので、滞在のたびに訪れます。今では日本で出会う人たちをすっかり信用しているので、幻想的な明治神宮から、ひっそりと佇む小さな寺や神社まで、行き方を尋ねながら訪れるのですが、いつも楽しい時間です。

私たちは日本をとても気に入っています。安全だといういこうとが特に好きですね。ロサンゼルスに13年住んだことがあるアメリカ人にとって、真夜中の東京で、中学生くらいの女子学生が、何の帰りかはわかりませんが、全く警戒する様子なく、また誰もそれに気を留める風でもなく、ごく当りまえのことのように街を歩いている光景は、ただ驚くばかりです。警戒せずに街を歩き回れるのは、貴重なことです。

もちろん、これは日本に対するレアな感想ではないですし、私たちと日本との結びつきを要約するものではありませんが、どこにいってもまず安全ですし、水が安心して飲めて、食べ物がおいしく食べられる。道に迷ったら尋ねることができるし、困ったら助けてもらえるのは、すばらしいことだと思いますし、ほっとさせられます。アフリカやアジアの他の国、南米に旅をするときには、ハンドバッグやスーツケースを常に見張っておかなければならないですし、タクシーに乗るにも騙されるのではないかと警戒してしまいます。文化が全く異なる国にいて、なんの警戒もいらないというのは、実に快適です。標識も読めず、簡単な会話すらままならない場所にいるのに、ストレスや緊張、心配を覚えないというのは、稀な組み合わせです。子供の頃、親が見守ってくれている感覚とすこし似ています。余計な心配をせずに街を歩き回ったり、こころゆくまで楽しめるのは、日本のありがたいことろです。

あなたはもう少しで3.11の惨事に遭うとことでした。日本の友人や生徒へのメッセージはありますか?

特別なメッセージというわけではありませんが、ただ、津波が発生して以来、毎日欠かさず、日本のみなさんを思い祈っています。私たちは祈りが持つ力を信じていますし、強い霊的信念を持っています。日本にいるみなさんに、私たちがいつも気にかけていることを知ってもらいたいと思います。月日が経っても、みなさんを思う気持ちは変わらず、祈り続けています。こうした私たちの、そして世界中で祈り続ける人々の思いが、みなさんの励ましとなることを願っています。

 

 

このインタビューはYouTubeで見ることができます(英語)

 

ポール・グリリーや陰ヨガやヨガの解剖学の詳細は、www.paulgrilley.comをご覧ください。



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